熊log

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ネパールの村で食べたカレー

8月11日から5日間ほどネパールに旅行へ行きました。いま私が住んでいるハイデラバードからはデリー経由でカトマンズまで約6時間。今回は学生時代の友人で今はJICA青年海外協力隊員としてカトマンズを中心に活動するKさんとMちゃんを訪ねに行くのが主な目的です。ここでは旅の中で特に印象的だった「村で食べたカレー」について書きたいと思います。


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ネパールに来て3日目の夜は、JICA青年海外協力隊のKさんが活動する村に泊めさせてもらうことに。カトマンズ中心部からバスで1時間ほど揺られ、降りてからさらに田舎道を30分ほど歩いたところにその農村はある。8月中旬というとネパールでは雨季に当たるが、幸いにも当日は快晴。日差しが強く山道を少し歩くと汗がにじんだが、日陰にはいるとひんやりとして気持ちよい。目の前に広がる水田の若緑と青空と白い入道雲の組み合わせがとてもきれいだった。

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村に着いてさっそく今夜泊めていただくKarki家にお邪魔する。よく日に焼けたおとうさんとおかあさんが笑顔で出迎えてくれた。当日は土曜日だったこともあり、大学生の娘さんも家に居た(ネパールでは土曜日が休日)。三人とも小柄ながらガッチリとした体型で、顔や雰囲気がよく似ている。今回、村を案内してくれるはずだった息子はどうやら外出中のよう。玄関の前で少し世間話していると、隣の家の人がやってきてトウモロコシを置いて行ってくれた。この間の会話はもちろんネパール語。私は横でネパール語を自在に操るKさんたちに感心しながら話を聞いていた。

村に着いたのが12時過ぎだったので挨拶もほどほどに居間に案内され、畑で取れたトウモロコシを昼食にいただく。茹で上がったトウモロコシに塩をまぶして食べる。食べ方は日本と同じ。ただ、トウモロコシの身は日本で食べるものと比べて何となく粉っぽく、甘みも薄い。ここの家のおとうさんは10年以上もドバイに出稼ぎに行っていて、ちょうど2か月前に帰ってきたばかりだという。そのためか部屋にはSony製の薄型テレビやかなり旧式だがデスクトップPCもあり、家にはWi-fiが通っていたりと、村の中では比較的裕福な部類に入るのかもしれない。

その後で村の近くの山に散歩に出かけた。家を通り過ぎるたびに村の人たちは明るく声をかけてくれた。村全体が見渡せる高台に上ると、田んぼが青々と広がっており、遠くに目をやるとカトマンズが山々に囲まれた盆地だということがよくわかる。天気が良い日はヒマラヤまで見通せるそうだ。ただ、標高が1300メートルほどあるので、日本の盆地のような蒸し暑さはない。

夕方になりKさんたちは町へ帰り、私だけがその家に残る。途端にネパール語が話せない私は不安になる。おかあさんに言われ、夕食を待つまでの間に村の入り口にある共用の水場へ体を洗いに行った。昼間は女性たちが洗濯をしていたが、夕方になるとこうして村の人たちが体を洗いに来る。一日歩いて疲れた体に冷たい水が気持ちいい。各家にはシャワーがないのでこうしてここにきて体を洗いに来るようだが、冬場や女性の場合はどうしているのだろう。聞いておけばよかった。髪を洗っていたら、ちょうどKarki家の息子が友達後ろに乗せてバイクに乗って帰ってきた。そこで、体を洗ったばかりの私も載せて三人でバイクに乗って一緒に帰る。

息子は英語が不自由なく話せるので、夕食を待つ間、彼の部屋でいろいろと話をした。彼もこの2年間は父親のいるドバイに行って、オフィスでメッセンジャー(オフィス内で書類を届ける仕事)として働いていたという。彼が英語を使えるのもその経験からだ。彼の携帯はiphone5Sだが、これもドバイでの仕事で得た給料で買ったものだ。SIMはプリペイド式で、ネットも電話も使っても月に500ルピー(500円)くらいそうだ。村はよく停電するので、携帯用のバッテリーは欠かせない。もともとは絵をかくのが好きで、インテリアデザインの専門学校に通っていたがドバイで働く父親に呼ばれてその学校は途中でやめたという。彼が昔描いたというガネーシャの絵を見せてもらったが確かに上手だった。これからは父親バイク整備会社を新しく立ち上げるらしく、今はその手伝いで忙しいという。

そして夕食。ネパールでは夕食が遅くて大体8時~9時くらいに食べる。その夜はネパールでは定番のダルカリー(豆のカレー)とライス、そして付け合せの野菜というシンプルなメニュー。ここはせっかくなのでスプーンは使わずに、手で食べる。ご飯をカレーに浸して一口すくって口に入れるとこれがまた感動するほどおいしい。カトマンズ市内でもインド(ハイデラバード)では食べられないうまいもの(主に日本食)をたくさん味わうことができたが、振り返ってみると結果的にはこのカレーが一番印象深い。写真の通り、いつもインドで食べているものとさして変わらないただのカレーなのだけど、なんというか深みのある味わいがある。家の前の畑で採れたばかりの新鮮な素材を使っているからなのか、野菜にもカレーにもしっかりとした「うまみ」を感じることができる。インドに来てから、辛みと油ばかりのカレーはたくさん食べてきたが、うまみを感じるものはほとんどなかった。でも、これはついついおかわりをしてしまう。すると、おかあさんがうれしそうにカレーをよそってくれる。そして、すぐにご飯のおかわりはどうか、野菜もどうかと聞いてくる。するとまたカレーが足りなくなりお代わりをお願いする。もはや、わんこそば状態である。こちらの人はお客がたくさん食べると大変うれしい気持ちになるというので、遠慮なくおなか一杯いただきました。その夜、寝苦しくなるくらいに。

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畑で採れたトウガラシ

次の日の朝ごはんもほぼ同じメニュー(付け合せの野菜だけが違う)だったが、食べてみるとやはりうまい。昨日食べたカレーは夢ではなかった。息子もドバイで働く2年間でもっとも恋しかったのは、母が作るこのカレーだったという。どこの世界でも、おふくろの味というのは得難いものだなと思った。

それにしても、本当に旨いカレーだった。
きっとこの先もネパールといえばきっとこのカレーとあの家族を思い出すであろう、忘れられない味。


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カトマンズ市内にて。「おふくろの味」が大変気になったが、残念ながらすでに閉店してしまっている。